第4章 たまには甘えていいですか?*三成、家康、光秀*
「光秀さんにも『ご褒美』あげます、今日は甘えていいですよ?」
(……は?)
真面目な顔でそう言われ、今度は俺が驚く。
ご褒美って、甘えていいですよって……
あまりに俺に似合わない言葉に、少し面食らって視線を逸らした。
「何、訳が解らない事を言っているんだ」
「訳が解らない事じゃないです、光秀さんも頑張ってますから」
「は……?」
強い言い方に、思わず視線を戻すと、舞はふにゃりと笑い……
膝立ちになったかと思ったら、広げた腕で俺の頭を包み込んだ。
(──……っ!)
柔らかな胸に抱き止められる感覚。
トクン、トクンと舞の鼓動が直に響いて……
俺の心臓まで、うるさく騒ぎ出す。
「舞っ……」
「お疲れ様です、光秀さん」
「は……?」
すると、舞は俺の頭を優しく撫でながら…
まるで言葉の一つ一つを噛み締めるように、ゆっくり穏やかに、その唇から紡いだ。
「私ばかりを甘やかすんじゃなく、光秀さんもたまには甘えてくださいね?光秀さんは、普段疲れたなんて言わないから……癒されたかったんですよね?お疲れ様です、貴方はよく頑張りました。少し…こうして休憩してください」
(舞……)
その柔らかな声が、心に染み入る。
腕から、胸から、温もりが伝わって……
なんだか、とても安らぐ心地を覚えた。
────このようにされて、嫌ではないな
まるで子どものように、あやされているけれど。
包み込む体温が、馬鹿みたいに俺を落ち着かせて。
ああ、もっとこのままでいたい。
そう思い、俺は舞の腰に腕を回して、ぎゅっと引き寄せた。
「お前は温かいな、舞」
「光秀さんも、あったかいですよ」
「もう少し……このままでいろ」
「……はい」
そうして、二人で温もりを分け合う。
照れ屋のお前は今、どんな顔をしているのだろうな。
そんな風に思っても、今は胸に顔を埋めて、お前を堪能して。
この一時を、もっと味わっていたいと……
甘く痺れるような感情を覚えた。
それは、いつしか心の中で愛しさと渇望に変わって。
疼くような、浅ましい感情まで見え隠れするのだが。