第4章 たまには甘えていいですか?*三成、家康、光秀*
「美味しい?」
「うん…まぁまぁじゃない」
「栄養を考えて、卵と炙った鮭を入れてみたよ。気に入ってくれたなら良かった」
(……美味しいな、すごく。癒される)
舞の手から食べるその粥は、今まで食べたどの料理よりも絶品だった。
美味しいよ、ありがとう。
その一言が言えない、ひねくれた性格が本当に嫌になる。
────もう少し、素直になれたなら
筋金入りとは解っていても、舞には少し素直になりたい。
そう思い、舞の手から粥を全て食べ終わると。
注いでもらった茶を飲みながら、俺は舞に問いかけた。
「……お礼、何がいい?」
「え?」
「粥のお礼。簪でも櫛でも、なんでもいいよ」
「そんなの要らないよ、欲しくてやった訳じゃないし」
「たまには素直にお礼させてよ、俺だって…あんたに感謝を伝えたい時くらいあるし」
「家康……」
思い切って言うと、舞は目を見開き……
驚いた表情をした後、少しだけ俯いた。
何故か、頬をほんのり赤い。
不思議に思って見ていると、舞はこぶしをきゅっと握って。
最大に愛らしい『欲しいもの』を言葉で紡いだ。
「家康、から、口づけがほしい……な」
(……っ、ちょっと何それ……)
この子は無欲だな、と前々から思っていたし。
ねだられる事もないか、欲しいものも解らなかったけど……
まさかお礼にほしいものが、こんなに可愛らしいものだとは予想外だった。
もう、今すぐにでもあげたい心地になる。
舞の表情が蕩けるくらい、甘い口づけを。
俺は俯く舞の頬に片手を当てると、少し上を向かせ……
そのままゆっくり唇を近づけた。
ちゅっ……
「……っ」
小さな甘い水音が響き、舞が息を詰める。
俺は唇に柔らかい感触を覚えながら、啄んで離した。
すると、舞は真っ赤な顔で頬を押さえ……
それを見ながら、俺はぽつりと言った。
「唇は、また今度ね。今はそれで我慢して」
「家、康……」
「これでお礼を済ませた訳じゃないから。ちゃんと…してあげるから」
すると、舞はふにゃりと笑い……
嬉しそうに『うん!』と声を弾ませた。