第4章 たまには甘えていいですか?*三成、家康、光秀*
《たまには甘えていいですか? 家康ver.》
(しくじった……まさか風邪をひくなんて)
一人、溜息が出る。
冬になって、真っ先に風邪をひいた俺は……
ふわふわと熱に微睡み、部屋の褥で横になっていた。
普段、体調管理はしっかりしている方だ。
具合悪くたって、誰も傍に居てくれないし……
まぁ弱ってる姿を晒すなんで、もっと嫌だけど。
────いや、誰も傍に居てくれないわけじゃないな
俺に、何かあったら一番に心配し。
嬉しい事があれば一緒に喜び、悲しいことがあれば真っ先に涙を流す。
そんな優しい子が、最近俺と一緒に居てくれる。
ずっと片想いして、やっと想い合えて……
今、愛しくて愛しくて仕方ない子が。
「家康〜、おかゆ持ってきたよ!」
何度目かの寝返りを打った時、その人物が襖を開けて入ってきた。
普段、平和ボケしてふにゃふにゃ笑っている顔も、今日は少し心配そうな面持ちをしている。
俺の事を心配してるんだな。
そう思ったら、心がほっこり温かくなった。
「具合どう?」
「別に平気……舞、風邪移るよ?」
「大丈夫、馬鹿は風邪ひかないから!」
「なにそれ…あんた、ばかだったの?」
「家康に比べれば、ふふふっ」
(俺の言葉にも動じないよな、舞って)
どんなに天邪鬼でひねくれた態度を取っても、気にしないのか解ってないのか、舞は絶妙な受け答えをしてくる。
まぁ、それがなんか居心地いいんだけどね。
そんな風に思って身体を起こすと、舞は布団の横に湯気の立ち上がる土鍋を置き、椀に粥を盛り付ける。
そして、匙(さじ)で一口分掬うと……
俺の口元に、それを差し出した。
「はい、あーん」
「えっ……」
「口開けて、あーんだよ?」
「じ、自分で食べられる、からっ……」
「あ、家康照れてる?」
「べ、別に、そんなことない」
「なら、あーん出来るよね?」
しまった、受け答えをを間違えた。
これじゃ食べなければ、照れていると認めているようなものだ。
さっきの心配そうな顔付きとは半面、今はにこにこしながら俺に食べさせようとしている。
俺は少し腑に落ちなかったが……
仕方なく、口を開いて粥を食べた。