第1章 満天の星に願いを込めて*秀吉、政宗、三成*
「こうしたほうが、はぐれないんじゃないか?」
「えっ……」
「……手、繋ぐのは嫌か?」
「え、えぇと…嫌、じゃないけど……」
すると、舞は不自然に視線を泳がせる。
やっぱり恋仲でもない男に、手を繋がれるのは嫌か。
そんな風に思っていると、舞は暗がりでも解るくらいに、頬を赤く染め……
少し俯きながら、ぽつりと言葉を紡いだ。
「ちょっと照れるね、なんか恋仲同士みたい」
(……っ、なんだこの可愛さ)
そうはにかんで言う舞は、馬鹿みたいに可愛い。
手を繋いだだけで、こんなに赤くなって。
まるで『照れる』感情が、こちらにまで移ったみたいに、俺も見る見る顔が火照ってくるのを感じた。
────可愛い可愛い舞
愛らしいお前を、もっと独り占めしたい。
繋がれた小さな手から、温もりが移って……
もっとその温もりを感じたくなる。
俺は、お前だけの……彦星になりたい。
「……なぁ、舞」
俺は包んだ手とは逆の手で、舞の頬を撫でると。
その俯いた顔を、上に向かせた。
そして、その黒曜石のように光る黒い瞳を見つめながら、今伝えられる全てを、舞に伝える。
「これから神社に行って、短冊を書くだろ?その短冊に書く願い…舞にも知ってほしいんだ」
「え……?」
「書いたの読んでいいから。そしたら…その願いの答えを、俺にくれないか?」
「願いの答えって、どーゆーこと?」
「読んでみれば解るよ。さ、神社へ行くぞ」
そのまま舞の手を引き、ゆっくり歩き出す。
舞は首を傾げながらも、手を引かれるまま、俺の半歩後ろを付いてきた。
短冊に書く願いなんて、決まってる。
だって、俺が望むことは、たったひとつだ。
『一人の男として、舞が欲しい。舞が俺の想いに応えて、恋仲になってくれますように』
これを書いた短冊を読んだら、舞はどんな顔をするかな。
困ってうろたえるかな。
それとも、喜んで笑ってくれるかな。
でも、手を繋いで赤くなるなら……
────微かな期待は、持っていてもいいか?