第1章 満天の星に願いを込めて*秀吉、政宗、三成*
《満天の星に願いを込めて 秀吉ver.》
「わぁ…すごい満天の星空だね!」
カランコロンと舞の下駄が小気味よく鳴る。
俺の隣を歩く舞は、天を見上げ、その瞬く星空に、うっとりしたような声を上げた。
今日は七夕だ。
神社に大きな笹飾りがあるから見に行かないかと、舞を誘い、今二人で神社に向かっている。
舞は折角だからと浴衣に着替え、綺麗に着飾って、待ち合わせ場所に現れた。
そう言う女らしいところは、本当に可愛い。
可愛く見えすぎて…正直困っている。
(……本当に、今の関係がもどかしいな)
別に俺達は恋仲でも何でもない。
一方的な、俺の片想いと言うやつで……
それでも、今日舞を逢瀬に誘ったのは、自分の気持ちを舞に伝えようと心に決めたからだ。
七夕に、織姫と彦星が逢瀬をしたように。
舞にも、俺だけの織姫になってほしい。
……まぁ、自分は彦星と言う柄ではないがな。
「そうだな、天の川がよく見える」
「こんなに晴れてるなら、織姫と彦星に願い事が届きそうだね!」
「舞は短冊になんて書くんだ?」
「ふふっ、内緒」
(なんだその顔、こいつはどんな顔でも可愛いな)
悪戯っぽく笑う舞が、また愛しい。
どんな表情をしても可愛く見えてしまうあたり…すでに舞の中毒になっているかもしれない。
もう少し、あと一歩近づけたなら。
そんな風に思い始めて、もう随分経つ。
正直な所、舞は俺をどう思っているのだろう。
少しは男として、見てくれているんだろうか──……
「…っ、どうした?」
と、不意に舞が着物の袖を掴んできた。
見れば舞は周りをきょろきょろ伺って……
少し困ったように笑った。
「神社に近くなるにつれ、人が増えてきたなって。はぐれちゃったら困るでしょ?」
「……」
だからって、そんな遠慮しがちに袖を掴んで…
そんな、まるで小動物のような仕草に、思わず心臓を鷲掴みにされる。
俺は掴まれている腕とは逆の手で、その袖にある手をそっと包むと、そのまま小さな手を握りしめ、舞に笑いかけた。