第3章 濡れる君の肌と淡い声*幸村、政宗、光秀*
「貴方を、心配しちゃいけないんですか…?!」
「心配する理由がないだろう」
「いっぱいあります!だって、私……」
すると、舞は唇を噛み締め……
少し俯くと、その唇から最高に可愛らしい台詞を紡いだ。
「光秀さんがすきです。だから…心配なんです」
(……っっ)
たった一言、『好き』と言う言葉の破壊力。
ただそれだけで、心臓を鷲掴みにされた。
舞、お前と言う娘は──……
純なくせに、男心を掻き乱して、悪い子だ。
そのように、素直に想いを言われたら。
────堪らない気持ちになるだろう?
「あっ……」
俺が舞の肩を掴み、自分の方に引き寄せると。
ぽすっと俺の胸にぶつかった舞は、小さく息を漏らした。
笠にぶつかる雨音が、何故か遠くに聞こえて……
代わりに、自分の心臓が高く鳴るのを、痛いくらいに感じていた。
「そのように、可愛らしい事を言うな」
「光秀、さん……」
「変に期待するだろう…俺にはお前は眩しすぎる」
「…っ、でも……!」
「いいから聞け」
そのまま、額にやんわりと唇を押し当てる。
ちゅっ…と小さな音を立てて口づければ、舞の頬が真っ赤に染まった。
見開かれた瞳は潤み、怖いほど澄んで。
これから公務で安土を離れるのが惜しいと思うほどに…熱い何かが胸の中を焼け焦がした。
「終わったら、真っ先にお前の元に帰ろう。そして、一番にただいまと言ってやる」
「本当ですか……?」
「ああ、だから…その時もう一度聞かせてくれ、その言葉を」
「光秀さん……」
「その時は、きちんと答えると約束する」
すると、舞は目を輝かせ、首を小さく縦に振った。
何故だろう、人を欺くために、嘘の約束はたくさんついてきたが……
お前との約束は、必ず守ってやろう。
そう思えて、心に小さな光が灯る。
その約束のために、俺は何があっても舞の元に帰ってこよう。
そうしたら、きっとお前は可愛らしく微笑んで。
『おかえりなさい、光秀さん』と……
この俺を迎えてくれるのだろうな。