第3章 濡れる君の肌と淡い声*幸村、政宗、光秀*
────愛しい愛しい、愛する者よ
鼓動がうるさすぎて、雨音すら聞こえない
しっとりと濡れた着物の奥は
きっと、柔らかくて温かくて、そして
俺を、至極の幸せに導いてくれるのだろう
それは今は叶わないとしても……
もう少し、もう少しだけ傍に居たい
「なぁ、帰るぞって言ったけど、やっぱり…」
「うん?」
「少し、遠回りしてから帰るか」
「え、なんで?」
「ばーか、察しろよ……もっと一緒に居たいって事」
「幸村……」
「……嫌?」
恥ずかしそうに首を横に振る舞は、有り得ないくらい可愛い。
そんな風に馬鹿みたいに惚れてるから……
これからも、コイツに振り回され続けるのだろう。
それでもいいと思ってしまう。
俺も…大概に馬鹿だな、呆れるくらいに。
「うんと遠回りして帰るぞ」
「はーい」
「……本当は帰したくねーけどな」
「え?」
「なんでもねー、ほら濡れんなよ」
そのまま、一つ傘の中。
肩をくっつけて歩き出す俺達。
こうして、お前と二人寄り添って、どこまでも歩いていけたら……
そんな事を思って、恥ずかしくなる。
それでも、ずっとこうして守ってやるから。
────ずっと、俺の隣に居ろよ?
雨粒が、そっと降り注ぐ。
ぱらぱらと傘に打ち付ける音を聞きながら。
歩く速度を緩め、いつまでも辿り着かなければいいのに…と。
俺は儚い願いを覚え、心の中で小さく苦笑したのだった。
《濡れる君の肌と淡い声 幸村ver.》
終