第2章 君との✕✕は甘く切なく*信長、光秀、家康*
「元気になる薬?」
「そう、要らないならいい」
「ううん、欲しい!」
「なら…もっと俺の方に寄って」
俺がそう言うと、舞は身体がくっつきそうなくらい、身を寄せてきた。
俺はそのまま、自然な仕草で舞の肩を引き寄せ、そして──……
ちゅっ……
その白く柔らかな頬に、自分の唇で触れた。
すぐに顔を離すと、舞は豆鉄砲を食らった鳩のような顔をしていて。
やがて、ぽっと頬を赤く染めると、真ん丸な目をさらに見開いて俺を見た。
「い、いえやっ……」
「なに、元気出なかった?」
「で、出たけどっ……!」
「なら、いいでしょ。そーゆー顔されると、こっちまで照れるんだけど」
(……真っ赤になってる、すごい可愛い)
頬に口づけただけで、こんなに頬を染めて。
恥ずかしくて、照れているんだろうな。
そう思っただけで、愛しくて心が疼いた。
舞に淡い恋心を抱き始めてから……
心は丸ごと舞に奪われてしまい。
いつか触れたいと、舞を見るたびに心が焦がれた。
今日のは、きっかけがあったからに過ぎないけれど。
もし、舞が俺を意識してくれたなら……
そう、思わずには居られない。
(……呆れるほど受け身だな、俺)
自らの臆病ぶりに、本当に情けないけれど。
それでも、手を出してしまうのは、少し怖い。
俺にすら、舞を汚されたくないと思うから。
「……家康」
すると、舞は未だに頬を赤くしながら、俺を再度ゆっくり見つめてきた。
潤んだ瞳、なんだかそれが熱っぽく見えて……
少しだけ、心臓が跳ね上がる。
「なに」
「あ、あのね、やっぱりそれじゃ元気出ない」
「……そう」
「だからっ…もう一度、ここにしてっ……」
「えっ……」
舞が『ここ』と言って指差したのは。
桜色をした、柔らかそうな唇。
しっとり濡れて、潤って……
俺がずっと触れたいと思っていた、禁断の場所。
そこにもう一度口づけろと舞は言う。
それはすなわち、舞も俺の事を……?
そんな仮想が立って、さっき跳ね上がった心臓が、さらに大きくドクンと高鳴った。