Rein Carnation《進撃の巨人/ライナー》
第12章 Side Story , Erwin -850-
あんなことをしたものだから当然の態度だ。
仕事を頼むが、俺を避けるようにして仕事をこなす彼女。
躍起になって彼女との溝を埋めようとする自分の姿は、彼女にどう写っているだろうか。
こんなにも年下に翻弄され、重大な案件を抱えつつ、そして兵団の長である事を頭に入れていても、彼女のことは常に考えてしまっている。
「これは重症だな・・・」
ふと窓の外を見れば、資料と書類の束を抱えたルイーゼがいた。
窓から声を掛けようとしたが、後ろからやってきた人物により、黒い感情が腹の底から湧き上がり、心を汚く蝕んでいった。
「ライナー・・・ブラウン・・・」
憎い相手を呼ぶ。
笑顔でルイーゼがライナーを小突くと、ライナーがルイーゼの耳元に顔を寄せている。
笑顔になり、小さく肩を揺らすルイーゼ。
二人でそのまま俺に書類を提出しにきた。
俺はルイーゼを残させてライナーを退出させる。
「あの・・・」
「仲が良いのは結構な事だが、不純だ。緩んだ顔で上司の前に堂々と現れるとは・・・見せたがりなんだな」
俺が近付けば、恐れを含んだ瞳が俺を映した。
「・・・申し訳ございません」
「まあいい。傷は?もういいのか」
頬に付いた傷痕が目に入った。
目に見えぬ傷の治りを聞くと、愛想笑いの微笑みで「良くなりました」そう答えた。
「良かった」
少しの静寂。
俺は膝をついて少し目線が近くなった彼女を見る。
何をされるかと身構えた彼女。
そうさせたのは俺自身だというのに。
胸が痛んだ。
「ルイーゼ、私を・・・拒まないでくれ」
そんな言葉が口から滑り出た。
久しぶりに視線が合う。
驚きのような感情を含んだ瞳は揺れ、グッと眉が寄る。