Rein Carnation《進撃の巨人/ライナー》
第12章 Side Story , Erwin -850-
ルイーゼの部屋をノックすると、返事が返ってきた。
扉を開くと、俺が見えた瞬間にいつもの美しい瞳は大きく開かれた。
「だ、団長・・・!?何故こちらに!?」
「部下の見舞いに来る上司がそんなに珍しいか?」
「いえ、そんな・・・」
痛々しい包帯が頭、手や足に巻かれ、頬にはガーゼが当てられている。
近付いてベッドに座り、ガーゼで覆われた頬に触れた。
ルイーゼは身体を揺らして手を凝視し、視線が合う。
「だ・・・んちょう・・・?」
「よくやったな。その痛みや傷は、君の戦果であり、勲章だ。・・・同室の者は・・・」
「・・・亡くなりました。彼女は右翼側を担当していたので・・・。亡骸は無事に・・・半分程取り返せたので・・・お家に帰してあげることが出来ました」
「そうか。ありがとう。彼女も安心して眠ることが出来るな」
手が、ルイーゼの身体を抱き寄せる。
あまりにも小さな体。
すっぽりと腕の中におさまる。
ルイーゼはグッと体を押して離れた。
だが、俺はもう一度引き寄せて抱き締める。
「団長・・・、団長っ・・・や・・・」
抱き締めて、力の入らぬルイーゼの顔を上げて、キスをした。
・・・俺は一体何を。
彼女はまだ子どもで、想いの通じあった相手がいる。
それを分かっているのに、触れるだけのキスを何度も何度もする。
ルイーゼは相変わらず、傷だらけの体を捩らせたりして抵抗する。
「団長!お止め下さい・・・!何故・・・何故こんなこと・・・」
「私は君が好きだ・・・君に、惚れている」
「私には・・・彼がいます・・・」
指にはめた指輪を、握る。
「君を私のものにしたい、君を・・・」
「・・・ごめん・・・なさい・・・」
ルイーゼは泣きながら、俺の体を押して布団に入り、そこからは何も話さなくなった。
ただ震える小さな背中に罪悪感を、そして自分に対する嫌悪感に襲われ、俺はただ「・・・すまなかった。ゆっくり休め」と言って部屋を後にした。