第2章 消えない疼き〈完〉
「じゃあ、さっきと同じように後ろから吸い出すから。
あんたは首を右に曲げておいて。」
「は、はい、こんな感じでいいですか?」
葵が髪をまとめ、首を右に曲げる。
いつもは見えない葵の首筋が露わになり、
顔に熱が集まるのを感じる。
くそっさっきあんな声を聞いたからだ!
あの傷をそのままにしておくことはできない。。。
処置なんだから
「じゃあ、いくよ。痛くても少し我慢して。」
「はい」
身体に触れないように首筋に口を寄せようとするが、また首をすくめられてしまう。
「ちょっと!」
「す、すみません。身体が勝手に…」
それから何度か繰り返すが
口を近づけようとするたび邪魔されてしまう。
「…ご、ごめん、なさい」
「‥‥」
「家康さん?あの…」
ぐいっ
がしっ
カプッ
ちゅー
腕を引き、背中から抱きしめるようにして
首筋に口を寄せ吸い出す。
「ひゃっあっんんん…んーー」
吸い出したものを懐紙にだし、消毒の準備をする。
そうしている間も
葵は力の抜けた身体を家康に任せたまま
耳まで赤くして俯いている。
「痛かった?」
「…だいじょぶ、です」
「じゃ、消毒と薬を塗るからそのままでいて」
「はい」
葵を自分に寄りかからせたまま
テキパキと処置を済ませ、患部を布で保護する。
「終わったよ。
飲み薬は今のところなくていいかな。
念のため治るまで毎日見せて」
「…はい」
「他はケガしてないよね?」
「はい…」
「じゃ、帰るよ」
「はい…」
ぼーっとしている葵の手を引いて立たせてから
お互いの顔を見なようにして、御殿へ向かう。
「じゃ、明日の朝また見せにきて。
今日は患部を濡らさないで」
そっぽを向いたまま声をかけ返事を待たずに自分の部屋に足を進める。
「…はい。よろしくお願いします」
部屋に入り、襖に背を預ける
「なんなのあの声…本当いい加減にして」
顔の赤さを隠すように、目元に手をやる
身体の疼きが消えない