第2章 消えない疼き〈完〉
翌朝、家康の目の前には俯いた葵が座っている。
「今日もやる必要があるんだけど、
昨日みたいに後ろからが良いか前からがいいか
あんたが選んで」
昨夜悶々と考えていたが家康には答えがでなかった。
後ろからは結構やばかった。
次は前か?前っていうと抱きしめる形になってしまう。
でも後ろも抱きしめる形だった
どっちがいいんだ?
「早くしてくれる?」
「…前からでお願いします」
「…わかった」
葵に膝で近寄る。
「痛かったら俺の肩で声消していいから」
真っ赤な顔してコクンと頷く
「じゃ、首を寄せて。いくよ」
「はい…」
華奢な肩に手を置き、首筋に顔を埋め
カプッ
ちゅー
「ひあっ。んんんーーー」
家康の肩で声を殺し、手を家康の背中に廻してしがみついてくる
吸い出し前回同様テキパキと処置を済ませる。
「終わったよ」
「…ありがとう、ございます」
「昨日の今日でこれだけたまったという事は、夜もした方がいい」
「…はい」
「夜は、湯浴みしてから俺の部屋にきて。そうすれば傷口が濡れても大丈夫だから」
「わかりました」
「じゃ俺は城に行く。あんたはもう少しここで休んででていいから」
「はい。見送れなくてすみません。いってらっしゃい」
いいたい事だけを伝え
葵の方に顔をむけずに部屋をでていく
城への道を歩きながらボソッっとこぼれた
「前もまずいだろ…」
そもそも、なんであんな声を出して身体を跳ねさせるのか。
処置とは違う色の行動をしてしまいそうで
そんな自分に辟易する
相手は患者だ
今までこんなことになったことはない
いつもヘラヘラ笑っている奴が
あんな傷を作って、あんな声をだすからだ
葵に文句の一つも言いたいが
自分が動揺している様子をみせることになりそうで控えている
ほっといたら死にそうなくらい弱いくせに、
こんなに俺の調子を狂わせてくるなんて
本当に気に食わない