第9章 新しい筆のおろし方02
「筆おろしをするのは、ある程度経験を持った年上の女性が担当することが多いんだ、筆おろしは女性が引っ張るものだから。
教えられるほどの経験を持っている必要があるんだよ。
どうするの?」
「っ!!どうするも何も、そういうことは好きな人としないとダメだよ」
「蘭丸は葵の事を好きだからいいって言っていたよね
だから信長様も勧めてきた
葵は蘭丸を嫌いじゃないよね?」
「…うん」
「葵の方が年上だし」
「うん」
「蘭丸は16だから筆おろしには遅いくらいだし」
「…」
「と、いうことは、あとは葵次第ってこと
信長様も葵に判断を任せるっていっていたから
ゆっくり考えればいい」
「でもっ…そもそも、私、教えられるほどの、、経験なんて…ないから無理だよ」
「じゃ断りなよ」
「私が断ると蘭丸君はどうなるの?」
「そういう事になれている他の人を連れてくるか、遊女や巫女を相手にすることになるだろうね」
「そ、んな」
「だからって葵が責任を感じることはない、この時代では当たり前だから」
「そうなんだろうけど、、、」
「葵が手伝ってあげたいけど、引っ張るほどの経験がないことを懸念しているなら、、学べばいい」
「学ぶ?」
「そう、信長様も言っていたでしょ?後見人である俺に教われって」
「だめっ、だめだよっそんなこと」
「どうして?」
「どうしてって、、そんなことを家康が教えるだなんて」
「弓術と一緒だよ、知っている人が知らない人に教えるってだけ」
「そんなっ簡単に」
「誰かが葵に教えなくてはいけないなら、それは俺の役割だ。誰かにその役割を譲る気はない」
「でも・・・」
「でもなに?俺じゃ不満?」
「ちがっ不満とかじゃなくて、家康は私とそういうことをしてもいいの?」
「教える必要があるなら俺が教えるっていってるでしょ。深い意味はない。嫌なの?」
「っ嫌とかじゃなくて、そういうことを教えてもらうって考えたことなかったから」
「今日の件は、俺から時間をくれるように願い出ておく。手伝うか手伝わないかは、ある程度学んでから決めれば?どういうものかちゃんとわかってから決めた方がいいでしょ?」
「…うん。よ、よろしくお願いします?」