第6章 酔いの代償 〈完〉
急いで自分の部屋へ向かうと…
「あっ家康おかえり~、お先に少し食べちゃった~」
華やぐように笑う笑顔が可愛い
「ただいま…それは全然いいけど、政宗さんは?」
「飲み会の準備をしていたらね
従者の人が呼びにきて急いで御殿に戻ったの
今日は二人で飲んでくれっって
この埋め合わせは必ずするからって言ってたよ」
思いがけず2人の時間を過ごせることに
顔が緩みそうになるのを堪え
大して興味がないそぶりをする
「ふうん」
「家康、座って?
お酒は家康と乾杯しようと思って待ってたの
早く乾杯しよっ」
うきうきと杯を渡してきて乾杯をせがむ姿をみて
先ほどまでの苛立ちが消えていることに気づく
(俺も人の事は言えないな…あんたが可愛くてしかたがない)
「それにしてもお酒に強い家康が顔に出るなんて、珍しいね」
「ああ、南蛮の葡萄酒を結構な量を飲まされた
あの人が無理やり飲ませるから」
「葡萄酒、、ワインのことだね?
あれって飲みやすいから飲み過ぎちゃうよね
信長様は家康に帰ってほしくなかったんじゃない?家康の事大好きだもんね」
「あんたの頭がお花畑だってことはよく分かった」
「なにそれ!相変わらず酷い」
頬を可愛らしく膨らませながらも
「でも、帰ってきてくれて良かった
今日はね、これとこれを私が作ったんだよ
家康にあわせてちょっと辛くしてみたけどどうかな?
足りなかったらいつものかけていいからね!」
早速葵が作ったというつまみを食べてみる
自分のために作ってくれたかと思うと、これまで食べたどんな物より美味しく感じる
「うん、美味しい」
「っ!!」
葵が固まったように家康の顔を凝視している
「ん?なに?」
「何でもない
美味しいって言ってもらえて嬉しいだけ」
「…そう、こっちはなに?」
「これはね…」
つまみの話から針子の仕事のこと
信長様や他の武将たちの話
いつも話さないお互いの事を話すのが楽しくて時間を忘れて飲んでいたのは覚えている…
それで
どうしてこうなった…?