第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
~家康side~
「昨日は蘭丸の事呼び捨てにしてたけど、もうしないの?」
自分の聞きたかった事を少しづつ聞いていく
「ああ、昨日の設定は町娘だったからね!」
「設定?」
「ほらお忍びだったでしょ?お互いに呼び捨てにした方が怪しまれないよねって」
「それはそうだね」
あれほどイライラする必要がなかったと今更ながらに後悔がつのる
そこまで自分が余裕をなくすなんて
「…昨日、、、」
「うん?」
「昨日、ケガしなかった?乱暴にしちゃったから」
「…大丈夫」
「そう、良かった。あとで気づいたりしたらちゃんと教えて?」
「うん。ねぇ家康、聞いていい?」
「…なに?」
「どうして昨日はあんなに怒っていたの?
あっ責めているわけじゃなくて、私が何かをしたからだと思うから、今後は迷惑をかけないように気をつけたいの」
アンタってほんとお人よしなんだね…
嫉妬に狂ってあんな風になったといえばどんな顔をするだろうか?
「あんたは何も悪くない
おれが勝手にイラついていただけ
イラついていたのも俺が未熟だからだ
気をつけないといけないのは俺
昨日は全面的に俺が悪い」
「家康、無理してない?」
「してない。さっもう部屋に帰りな」
ぱっと抱きしめていた手を離し、襖の方へ葵を誘導する
「うん…」
襖を出る前に葵が足をとめ振り返る
「家康」
「ん?」
見上げてくる顔が可愛くて、もう一度手を伸ばしたくなるのをやっと堪える
「家康って優しすぎて困っちゃう。やっぱり人気があるのが分かるね!ありがと!じゃ」
するっと踵を返し走り去っていく後ろ姿を見ながら
葵のぬくもりが残る腕を片方の手で握りしめた
アンタにしか優しくない
アンタにしかあんなことしたくない
それを知っているの?
終(次ページあとがき)