第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
~家康side~
葵の簪をもつ手にそっと触れる
今度は拒絶されなかったことに安堵し、
頭をなでる
「もうあんたを怖がらせるようなことはしないから
昨日は本当にごめん
飾り紐もありがとう、大切にする」
「うん」
「ねぇ葵、すこしだけ、抱きしめていい?」
「えっ」
「何もしないから、仲直りさせて」
「だ、だめ…」
「まだ俺の事怖い?」
「ううん、怖くないよ」
「じゃあなんでダメなの?」
「…」
「まだ怒っているってことだね」
「違うよ!こ、これ以上優しくされると、困るの」
「…冷たくされたいの?ならしてあげるけど」
「もう!違うでしょ!!家康の意地悪」
ふわっと怖がらせないように優しく腕の中に閉じ込める
最初はピクっと身体を震わせたが、諦めたように身を任せてくる
「昨日はほんとにごめん」
「もう謝らないで、、私も嫌な態度をとってしまってごめんなさい」
先ほどと同じように葵の頭を撫でてやる
「この御殿を出たい?」
「しょうがないから居てあげる、まぁ深い意味はないけど」
見上げながら自分の言い方を真似て可愛くない事をいってくる
「ふっあんた生意気」
「知ってる」
「蘭丸との外出は楽しめた?」
「うん、蘭丸君て色々詳しいんだよ
色んな人が教えてくれるんだって、城内だけじゃなくて城下でも人気があるんだね」
「ああそうみたいだね」
「蘭丸君が言ってたけど、安土の武将たちはみんな人気者なんだって。そうだよね、皆とっても素敵だもん」
「そうなんだ」
「そうなんだ…って、他人事みたいに!そこに家康も入ってるよ?」
「あんまりそういう事には興味ないから」
「そっか…私だったら自慢しちゃうのにな」
「葵だって人気あるでしょ」
「あるわけないじゃない!ふふっ家康も面白いこというね」
信長様を筆頭とした武将たちに可愛がられている葵が言う事じゃないけどね…