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イケメン戦国~IFな小噺(家康only)~

第3章 雨担当の憂鬱〈完〉


~家康side~


慌てて城を出てきたが、自分の言いたいことが整理できていない…
とりあえず、少なくとも昨日無理やりしたことを謝ろう
御殿での生活を楽しんでいてくれたなんて考えもしなかった
それを自分の手で壊すなんて、、、馬鹿だ



「葵は?」

予定していた時間より随分早く城から戻ったところを出迎えに出てきた臣下に尋ねる

「先ほど庭で小鹿にエサを与えていらっしゃいましたが、お呼びしましょうか?」

「いや、いい」



中庭に面した廊下から、葵の姿を探す
すると程なく、池のほとりにワサビと一緒にいるのを見つける

驚かせないようにとゆっくり近づき声をかけた

「葵」

座り込んで池を見ていた葵が弾かれたように顔をあげる
頬には涙の痕があって、目が合う前に逸らされる
さっと頬を拭い、言葉をかけてくる


「おっおかえりなさい。すみません、お迎えもせず。あっ用事を思い出したので失礼します」

家康がいる方とは別の方向に逃げるように走り出そうとする


「葵、待って!」

手首をつかみ、引き留めると

「ひっ…」

ビクリと大きく身体が震えるのが分かる


思いがけずあがった悲鳴に慌てて、手を離す

「驚かせてごめん、、、昨日の」

「きっ昨日は申し訳ありませんでした。もう勝手な真似はしません、、ので」

家康の言葉を遮り、
自分を守るように抱きしめながら震える声をだす

「葵、もう何もしないから、、少し話をさせて?」

嫌々するように首をふり

「急ぎます、、ので、失礼します」
「葵、お願いだから」
「す、すみません。。また、後日にでも」

後ずさりをしながら、徐々に離れようとする姿に
怖がらすことしかできない自分に苛立ちを感じるとともに
加虐心が思いがけずくすぐられた



「…この御殿で俺より優先されるものはないはずだけど?」

「あっ‥‥」

葵の目がやっと家康を捕らえ、怯えたような目を向けてくる
葵が自分をとらえたことに妙な満足感があった

俺もよっぽどだな…
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