第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
~姫side~
帯に手をかけられ、着物が脱がされていく
何が起きているのか理解できなかった
え…?
「やめっ」
続けて与えられる
首筋から胸元に与えられる刺激で
あふれ出した羞恥と甘い疼きで身体が熱くなる
いつの間にか褥に横たえられ
慌てて逃げようと試みるが
家康の身体が圧し掛かり、両手を頭の上で拘束されてしまう
間近に迫る、瞳に
ドクンと心臓が鳴る
だめ、これ以上は
この人をこれ以上心の中に入れてしまったら
帰れない
帰りたくない
「家康、やめて!どうしてこんな‥」
怖い
どうなってしまうか分からない自分が
どこかで喜んでしまっている自分が
もっともっとと彼を求めてしまっている自分が
涙があふれ身体が震える
これ以上は、、ダメ…
早く離れないと、早くっ
「もう、やめ、て、やめて、もう、ここを出ていく、から、、、
家康に、迷惑かけない、から。家康の、目に入らないところにいくから
ごめんなさい、もう許して、お願い…」
スッと身体を離した家康が
何の感情も見えない目で言い放つ
「何言ってんのあんた。
あんたはこの御殿で見張られているって忘れたの?
もう二度とあんたを外には出さない。
さっさと湯浴みして寝なよ」
言葉は冷たいのに、
羽織をかけてくれる仕草が優しくて
香る家康の匂いが切なくて
羽織を胸に抱きしめながら
涙が止まらなかった
優しくしないで…
朝まで抱きしめてしまっていた羽織は皺くちゃになってしまった
触れたい
早く離れて
顔がみたい
もう会ってはダメ
池を泳ぐ鯉を見ながら、
相反する気持ちに胸がはち切れそうで涙がでる
いえやす、すき
声に出さずとも、口をうごかしたら
もう涙が止まらなかった
「葵」