第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
~姫side~
そんな時に蘭丸君からの外出の誘いはとてもありがたかった
気分転換にもなるし、
私が家康を好きだと知っている人だから気兼ねなく話ができてよかった
家康とのお揃いの飾り紐を作ってきたし…これで現代に戻っても繋がっていられるよね
「いつも一緒にいられるね…」
遠く離れたとしても、繋がっていられるかもしれない
ちょっとは気が楽になった
家康といい関係を保ったまま、現代に帰ることが出来れば、いいのかも
なんて
すこし吹っ切れて帰ってきたら
家康が冷たい目で私を見下ろしていた
苛立ったように私をみて、
飾り紐の簪に手をやるから、ついその簪を隠してしまった
お揃いにした事は家康に内緒にするつもりだったし、
勝手にお揃いなんかにして嫌な気持ちを持たれるのが怖かった
折角の繋がりを受け取ってもらえなかったら…そう考えるだけでも怖かった
「あんたを見てると本当に苛立つ」
今まで向けられたことのない冷たい目線に、サーっと身体から熱が引くのが分かった
とうとう自分は嫌われてしまったんだ
身体と心が凍り付くなか
もしかしたら、現代に帰る私にとっては良いことなんじゃないかという考えが湧いてくる
いっそのこと嫌われてしまった方がいいのでは?
そんなことを考えていたら
首筋に噛みつかれたことに気が付いたのは、
痛みとピリッとした疼きを与えるものが離れてからだった