第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
~姫side~
「あんたを見てると本当に苛立つ」
冷え冷えとした目で見降ろされ、心が凍るかと思った
昨日、家康に向けられた冷たさを思い出し
自分の身体を抱きしめる
部屋にいても落ち着かず、庭に出てきたが…落ち着かない
家康は今日は遅いらしいから、もう少しここにいられるかな…
池を覗き込める場所にしゃがみ、昨日を思い出していた
首筋に噛みつかれたことに気が付いたのは、
痛みと甘い疼きを与えるものが離れてからだった
好きな人に抱きしめられることを夢見たことは、、、何度もある
不器用で優しいあの人の腕に抱きしめて欲しい
私の思いを伝え、あの人が受け入れてくれるとは思えないけど…夢見てしまっていたことは確かだ
でも、現代に帰る私がそんな事を願ってはいけないとずっと心の奥にしまっていた
家康に思いを伝えてしまったら、、、
もし家康の腕に抱かれてしまったら、、、
私はもう二度とこの時代から離れられない
佐助君の話では
「歴史を変えてしまったことで、もしかしたら強制的に戻らされることがあるかもしれない…」
家康をこれ以上好きになった状態でそんなことになったら…私は現代に帰ってどうなるかなんて想像もしたくない
多分私は壊れてしまう
これ以上深入りはしちゃだめ
毎日毎日、そんなことを思っていた
でも
一目顔をみれば
声を聴けば
もっともっとと求めてしまっていた
私はこのまま現代に帰ることができるのか?
そんな答えの出ない問いの日々は思った以上に疲れが溜まるようで…