第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
~蘭丸side~
天守に足をむけながら
家康様、この日ノ本で葵様を好きになったのは俺が一番最初なんですからね
葵様を泣かせるなら、奪うから
初めて会った葵は天人のように美しく強かった
次にあったときには、あの人の御殿で楽しそうにへにゃへにゃ笑ってた
どちらも魅力的で、コロコロ変わる表情が可愛らしくて、目で追うようになった
だからすぐに分かったんだ
あの人のことが好きなんだって
そして、
葵を見るあの人の目が優しくなることも
俺が本能寺ですぐに織田軍に合流していれば、違ったのかな?
もしもを考えてしまう自分の弱さに肩をすくめながら、
胸元に忍ばせていた飾り紐をだす
「葵様、こんなことをしたら家康様に嫉妬されちゃうよ?」
お礼だと渡された飾り紐は桃をかたどったもので、葵様のように可愛らしかった。
その桃に口づけ
「今回はこれで許してあげる」
と笑い天守への階段を軽やかに駆け上がっていった