第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
~蘭丸side~
ひょこっと廊下の角から蘭丸が顔を出し
御殿へ急ぐ家康の背を見つめる
「全く手間のかかる2人なんだから」
あの様子だと昨日の夜は色々あったのだろう
蘭丸をみる家康の視線にこれまでにない冷たさと鋭さがあった
「葵様が傷ついていないといいけど…」
まぁ傷ついていても自分には癒せない
傷つけることができるのも癒せるのも家康様だけだろうから
ここ数日、あえて家康を煽るような行動をしてきた
一昨日は、いつも以上に親し気に話し、葵の身体に触れ、誤解されるような言葉を葵から引き出した
昨日は、自分が選んだ着物をきせ、髪を結い、身体をよせて、一日連れまわした
全部家康に聞こえていることは知っていたし、イラついているのも分かってた
葵様は全然気が付いていなかったけどね。
あの状態で葵が帰れば…
で、今日の家康の顔をみれば一目瞭然だ
今日は怒りと後悔、蘭丸に対する嫉妬がない交ぜになった目を向けてきた
あーあー怖かった
機嫌の悪い顔はよく見ているが、家康様にあんな顔をさせるなんて葵様も罪な人なんだから
ふっとため息をついたところに秀吉様に声をかけられる
「蘭丸どうした?こんなところで」
「雨降って地固まるの雨役も疲れるなって、、損な役回りです」
「どういうことだ?」
「いえいえ、こちらの事です。秀吉さんはどうしたんです?」
「ああ、信長様がお呼びだ」
「はーい!わかりました」