第3章 雨担当の憂鬱〈完〉
廊下に立っていた家康に気が付いて
葵がへにゃっと笑顔をつくる
「あっ家康!帰ってきたんだね、お帰りなさい
出迎えが遅れてごめんね」
後ろにいた蘭丸が葵の肩に手を置いて声をかけてくる
「家康様、お帰りなさーい」
「…ただいま」
「家康様。
明日葵様と外出してきていいですか?
信長様は家康様の許可があればいいとおっしゃってくださいました!
葵様とばれないように変装していただこうと思っていますので、ご心配なく!
今日はその許可をいただくためにお待ちしていたんです」
「えっ明日でかけるの?」
「うん、そうしようかと思って
家康様に許可を得てから葵様に話そうと思ってたんだ」
葵が向けるキラキラした目線を避けるように顔をそらし興味なさげにいう
「好きにすれば?」
「ありがとうございます。明日朝迎えにきますね。
葵様とお出かけだーやったー」
蘭丸が隣にいた葵に抱きつき
2人で喜ぶ姿を見たくなくて
脇を通り過ぎ、自分の部屋に足早に向かう
部屋に入っても
明日の予定を楽しそうに話す声が聞こえて更に苛立ちがつのる
「じゃあ葵様、俺帰るね」
「うん、今日はありがとう」
「明日は、朝餉も食べないでね!夕餉まで一緒に食べよう!
御殿の人には俺から話しておくから
おすすめのお店に連れて行ってあげる
一日めいっぱい遊ぼう!
俺が着替えを持ってくるから、
それに着替えて可愛くなって出発だよ!」
「どこに行くの?」
「内緒、明日のお楽しみ」
「ふふっ楽しみにしているね」