第2章 消えない疼き〈完〉
「あんたを座らせるのは得策じゃないという結論に至った」
夜、家康の前に俯いて座っていた葵が顔をあげた
「えっ?」
「処置をするのに、あんたを座らせるのはやめる。」
今日も一日中考えていた、
後ろも前も
結局葵の腰がフニャフニャするからダメなんだ。
だったら、フニャフニャになっても大丈夫な状態にして
処置すればいい。
かといって、朝のように横になっている葵の上に馬乗りになって処置するのはもっとダメだ。
胡坐をかき、葵に手を伸ばす。
「じゃ、こっちきて」
「はい」
葵は素直に近づいてくる
近づいてきた葵の手を引き
「俺の足の上に横に座って」
座るように誘導する。
「ええっ」
「いいから早くして。これ以上迷惑かけないで」
手を強くひく
「は、はい。失礼します」
葵はおずおずと足の上に座る
軽いな…小さいし
思っていた以上に儚いことはこの数日で分かっていたが
軽すぎる
「あんたちゃんと食べてるの?軽すぎない?」
「た、食べてます!ここの食事が美味しいので食べ過ぎているくらいです」
もっと栄養価の高いものを出すように指示した方がいいかもしれない。
栄養価の高いもの…干し柿や鶏卵などがいいかもしれない。
一品の量を減らし、品数を増やすように言っておくか
ナツメの薬酒を飲ませるのもいいな
別の事に考えを巡らせていると
家康の足に納まった葵がもぞもぞしていることに気が付く
「あんたは首を動かすだけでいいから」
「はい」