第9章 体育祭
~黒子side~
体育祭の後片付けはみんなやりたがらない。
だからサボる人も勿論いて、僕と久瀬さんがいる保健係は僕達2人以外誰も片付けに来なかった。
「まあ別に、保健係の仕事なんて救急箱の片付けくらいなんだけどね~」
そう言いながらもサボらずにせっせと働く久瀬さんは偉いと思う。
そんなことを言ったら、
「それは黒子くんもじゃん」
なんて言って笑うだろうから言わないけれど。
救急箱を片付け終えた久瀬さんがゴミ袋に手をかけようとした時、一瞬早く僕がゴミ袋を掴んだ。
「僕、ゴミを捨ててきます」
「あ、うん!よろしく」
さすがに、重いゴミ袋を久瀬さんに持たせるわけにはいきませんからね。
ゴミ袋2つを少しふらつきながら何とか焼却炉まで持ってきた。
…バスケの時以外でも、こういう時、筋力がもっと欲しいと思います。
ゴミ袋を焼却炉に入れようとしたとき、焼却炉の裏から微かに声が聞こえた。
少し耳を澄ましてみると、それは黄瀬くんと青峰くんの声だった。
「あーあ、やっぱり青峰っちに勝てなかったっス」
「別に体育祭のリレーなんかどうでもいいだろうが」
「いやいや大事っスよ!だって俺、リレーで青峰っちに勝てたら瑠衣っちに言うつもりだったんスよ」
「は?瑠衣?…言うって、何をだよ」
「何をって…分かんないんスか?
瑠衣っちのことが好きってことをっスよ」
「………は、あ!?」
「…まあ実際は負けたくせに告白に近いこと言って、しかも分かってもらえなかったんスけどね」
…やっぱり黄瀬くんは久瀬さんのことが好きだったんですね。
でも久瀬さんは青峰くんのことが…、それを黄瀬くんも知っているはず。
「青峰っちさぁ、瑠衣っちをいつまで待たせる気っスか?」
「…何のことだよ」
「あーダメダメ。そういう鈍感なフリする男はただのヘタレっス」
「なっ…!黄瀬テメェ、誰がヘタレだ!」
「アンタのことっスよ。分からないなんて言わせないッスよ。
いい加減にしないと俺、
瑠衣のこと奪うっスから」