第9章 体育祭
体育祭は、私たち青団が優勝を貰った。
私が出場した女子選抜リレーも、バトンが上手く繋がって、余裕を持って1位でゴールした。
やり残すことは何もない!と真雪と笑い合い、満足した。
だけど、一つだけ引っかかっていることが。
『青峰っちから盗ってみせるから』
黄瀬のあの言葉は、
「…どういうことなんだろ」
「何が?」
横を並んで歩いていた真雪が私の独り言に反応する。
私は真雪に、黄瀬との間にあったことの一部始終を話した。
すると真雪は、黄瀬と同じような難しい顔をした。
「瑠衣は、それを聞いてどう思った?」
「え?どうも何も、黄瀬の言ってることの意味が分からないんだけど…」
正直にそう言うと、真雪は大きな溜息を吐いた。
「瑠衣はもう少し自分の周りをよく観察してみたら?」
「観察?」
「そうだよ。何故かすごく優しくしてくれる人とか、視線を感じることとか無い?」
「う~ん…特には…」
「そんなわけないでしょっ」
えっ、質問しといて解答を一刀両断ですか真雪サン。
なんてふざけたことを思いつつ真雪の顔を見たら、
何故か辛そうな顔をしていた。
「少なくとも、黄瀬くんは瑠衣に優しくしてると思うよ」
「黄瀬が…?」
「分かってあげてよ、見てて痛いくらいの、
黄瀬くんの気持ち」
黄瀬の気持ち…?
私が分かってあげる黄瀬の気持ちって、何のこと?
「私はこれ以上言っちゃダメだから、瑠衣に気づいてほしい。
青峰くんを想ってることは分かってるけど、だったらせめてけじめをつけてあげられたら…」
…なんでそこで大輝が出てくる?
その黄瀬の気持ちとやらは、私が大輝を好きなことと関係あるの?
それにけじめって、そんな言い方したらまるで黄瀬が
…………私のこと、
好き、みたいじゃん……