第6章 変わっていく関係
~黄瀬side~
あちゃあ…瑠衣っち先生に怒られちゃったみたいっス。
これは、後で瑠衣っちに謝りに行った方が良いっスね…!
(黄瀬のくそやろう…!)
…今瑠衣っちの心の叫びが聞こえた気がするけど、気にしたら負けっス。
「なあ黄瀬、今お前が手振ってたの誰?」
不意に後ろから、大して仲の良くない男子に話しかけられる。
てかこの人の名前なんだっけ…まあいいや。
「2組の久瀬瑠衣だよ」
「久瀬…?あー桃井さんの幼馴染みか」
「え、何で幼馴染みって知ってんの?」
「そりゃ、久瀬と仲良くすれば桃井さんに近づけるって桃井さんと同小の奴が広めてっからだよ」
「は…?」
何スかそれ。
瑠衣っちと仲良くするのは桃っちと仲良くなりたいからってこと?
それって瑠衣っちに失礼じゃないっスか。
「だから、最近じゃ桃井さん目当ての奴が久瀬使って近づこうとしてるらしいぜ?」
は?使うってなんだよ。
瑠衣っちは物じゃねーだろ。
「…瑠衣っちはその噂が流れてること知ってんの」
「知ってるだろ有名だし。それに、実際に小学生のときに何回かあったみたいだしな」
「……」
「俺もその手でいこうかなー。あ、黄瀬も実は久瀬経由で桃井さん狙ってるとか!?なんちって…」
「黙れ」
お前に瑠衣っちの名前を呼ばせたくねぇ。
「え…き、黄瀬…?」
「そんなくだらねえことで瑠衣に近寄んな!」
自分でも驚くくらい低い声が出た。
多分俺は怒ってんだろうな、なんて他人事みたいに思う。
顔を青くして黙り込んだそいつを睨みつけ、足早に居心地が悪いそこを離れた。