第5章 透明少年と本
「そうだ、久瀬さん」
「はい?」
黒子くんはスクバから一冊の文庫本を出し、私に差し出した。
「例の本です」
「お~!ありがとう!なるべく早く返すね」
「ゆっくりでいいですよ。僕も緑間くんも読み終わりましたし」
「ううん、二人に早く感想言いたいから!」
ウキウキしながらそう言うと、黒子くんも、僕も批評会楽しみです、と言ってくれた。
批評会ってなんかカッコいい言い方だねって褒めたら笑われてしまった。何故…。
「それにしても、緑間くんがこういう本読むなんて意外」
「恋愛小説ですからね。しかもマイナーな新人の」
「緑間くんも恋愛に興味あるんだね」
恋する緑間くんを勝手に想像して一人笑っていた。
黒子くんも微笑んでいたが、暫くすると急に、にやついた笑顔を浮かべた。