第4章 リレー選手
~黄瀬side~
この衝撃は一体何なんだ。
俺は走り出した久瀬っちを信じられない気持ちで見ていた。
久瀬っちは運動とかあんまり得意そうに見えなくて、だから足が速いって言っても平均より速いくらいだと思ってた。
だけど、今走ってる彼女は平均以上なんてもんじゃなくて。
とても綺麗なフォームで走る久瀬っちを俺は純粋に美しいと思った。
「すっげえ…」
こんなにドキドキしたの、青峰っちのプレーを初めて見たとき以来だ。
…まさか俺、久瀬瑠衣に憧れてるのか?
あんな普通の女の子に?
いや、この感情は憧れとは違う気がする。
彼女に追いつきたいというよりは、彼女を手に入れたいという気持ちが…。
「あの子速いねー。名前なんだっけ?」
ふいに後ろから紫原っちに話しかけられ意識が現実に戻ってくる。
気づくと久瀬っちはとっくに走り終わっていた。
「ああ、久瀬瑠衣っスよ」
「ふ~ん、瑠衣ちんね。覚えとこ」
楽しそうに笑う紫原っちに俺は目を丸くする。
滅多に人の名前を覚えようとしない紫原っちがこんなことを言うなんて。
てか紫原っち、いきなり下の名前で呼んでるし。
なんか面白くないっス…。