第2章 夏休み
「おい黄瀬、テメー瑠衣のこと口説いてんじゃねえよ」
「えっ!?いやいや誤解ッスよ!ねえ久瀬っち!…久瀬っち?」
黄瀬に何か言われている気がするが、まるで耳に入ってこない。
大輝に抱きしめられている(厳密には首に手をまわしてるだけ)と分かってから顔が尋常じゃなく熱い。
お願いだから誰も顔見ないで…!
私がずっと黙ったままでいるのを黄瀬は不振に思ったようだが、私の顔を見ると途端にニヤニヤした。
「もしかして、青峰っちと久瀬っち付き合ってるんスか?」
「ち、違っ…!」
「違えよ、ただの幼馴染みだ」
顔を真っ赤にしてるであろう私とは違い、大輝は全く動揺せず、そう言い切った。
その言葉に私は少なからずショックを受ける。
"ただの幼馴染み"
私と大輝はただの幼馴染み。
そんなこと分かってたけど…
そんな冷たく否定しなくたっていいじゃん。