第8章 【番外編】マツノトクエスト 第七章
「もしその旅が出来なくなったらナス子はどうなっちゃうんだろうね?」
「え? 何言って━━━━━━━……うぉっ?!」
個室のソファとテーブルに座っていた為か、ドサリとトティ美に押し倒されてしまい、閉じかけた瞼が少しだけ大きく開いた。
「え、トティ美? どうしたの、スキンシップ~? なははは」
「まぁだ気づかないの? 伝説のパーティとか言うからもっと賢くて頭の回転も速い女の子だと思ってたけど、案外鈍いんだね」
私の上に乗るトティ美は自分の髪に手を伸ばし、長くて綺麗な黒髪をスッポリと外す。
なっ、なんだってえぇぇ?! それ、ヅラだったのか━━━!!
ってそうじゃない。
待って、これ、こいつ。
━━━━━━━━━━コイツは……。
「トド松?!!」
「ん? 何でぼくの名前を知ってるのナス子。もしかしてもう僕らの正体がバレてるとか? それともカラ松が言ったの?」
外されたヅラは床に落ち、着ていた自分の服に手をかけて脱ごうとしている。
カラ松が……という事はトド松も記憶がなくて、トト子の下僕の一人という事だろうか。
それよりこの状況マズくない?
体勢的に嫌な予感しかないし、ていうかトド松が私を押し倒している事実にビビるけども今は記憶ないし仕方ないのか?!
記憶取り戻したら一番にハリセンでボコるけども。
でもトド松自身も記憶戻ったら絶対辛口な事言ってくるか落ち込むぞ。
私なんかを相手に押し倒したとか知ったらショックでボケちゃうかも!
「勇者一味を倒して来いってご主人様に言われてたけど……そんなのぼくのキャラじゃないし。それならこっちの方がまだてっとり早いって言うのかなぁ? やるなら旅を続けられなくした方が早いもんね! ねぇ~」
ニコリと私の顔に自分の顔を近づけて微笑むトド松。
その表情は悪い事を考えた時によくやるゲスで悪魔の顔だ。
なんでコイツら皆記憶なくしちゃってるかなぁ、早く記憶取り戻したいんだけど……。