第2章 転校生
「はい、皆さん、席に着いて下さい。」
担任がそう声をかけると、ざわざわとした後、静まり返る。
転校生を今か今かと待ち望んでいる。
「今日は新しいお友達を紹介します。」
「新しいお友達」まるで子供のような表現だ。
うちのクラスの担任は若い新任の女性教諭。
みんなから可愛いと人気だが、少し頼りない。
ガラッ
教室の引き戸が開き、女の子が入ってくる。
その瞬間、クラス全員の視線が転校生へと集中する。
赤味がかった茶色い髪、色の白い肌、日本人より少し色素の薄い瞳。
なんだ、やっぱり日本人じゃないか。
フランス人なんて言ってたのは誰だ。
口々に、勝手なことを言うクラスメイト達。
でも俺は彼女から目が離せなかった。
「………みさと……?」
俺のそんな呟きは、思いの外教室に響き渡ることとなった。
ざわざわ……
「知り合いなの?」
「幸村くんと知り合い!?いいな!」
女子達は遠慮もなく彼女に声をかける。
まだ自己紹介もしていないのに名前を呼んだんだ、無理もないだろう。
でもそんなことはどうだっていい。
また、会えたんだ。
彼女に。
あの、女の子に。
俺に、会いに、約束を果たすために、戻ってきてくれたんだ。
そうして俺は彼女がまた昔のように微笑むことを期待した。
「せいちゃん」と、そう呼んでくれると期待をした。
俺は期待を込めて、もう一度彼女の目を見て、今度ははっきりと呼んだ。
「みさと」