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記憶の奥底に

第2章 転校生


「うちのクラスに転校生が来るらしいよ!」
「ほんと!?女の子かな?男の子かな?」
「俺、可愛い女の子がいいなー」
「フランスから来たんだって!」
「まじ!?フランス人!?や、やべぇ、ボ、ボンジョルノ!」
「馬鹿、それイタリア語!」

久しぶりに来た教室はやけに騒ついていた。
中学3年の2学期に来る転校生なんて珍しい。
しかも外国から。
そりゃあ皆騒ぐよな。

「…フランスか………ふふっ…」

その国名を聞いた瞬間、思い描くのは1人の女の子。
優しくて、頑張り屋さんで、泣き虫で、家族が大好きな女の子。
幼き頃の"約束"を思い出し、思わず笑みが零れる。

「幸村くん!!」

俺が教室に入るとクラスの女子が気づき、一瞬教室のざわめきが止んだ。

「退院したの!?もう大丈夫なの!?」

一瞬にして女子に囲まれてしまう。
女子は苦手だ。
こちらの迷惑も考えずに追いかけ回す。
取り囲んで質問責めにする。
昔から慣れっこであしらい方にも自信があった。

少し微笑んで
「大丈夫だよ、ありがとう。」

そう言えば、女子はキャーキャーと勝手に満足してくれる。
自分でも嫌な性格になったものだと呆れてしまう。

女の子なんて好きになっても仕方がない。
好きになったって、いつかは離れていってしまう。
10年前の"あの子"のように……
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