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氷の少女

第2章 本章~決意~


部屋であたしはひたすら楽器の練習に励んだ。
ピアノをはじめ、ヴァイオリン・フルート・琴など……。
そのたびにコンクールなどに出場して最優秀賞を取って……。
その繰り返しだった。

だけどあたしは楽器は嫌いじゃないけど、それよりも歌が好きだった。
歌うのも作るのも考えるのも……。

「奏。大広間に来なさい」

いつから居たのか分からないけど、扉の傍から祖母が顔を覗かせた。

「はい」

また何か言われるのかと思うと憂鬱で仕方がなかった。
もちろん、あたしに拒否権などない。
あたしはただの“生きた操り人形”に過ぎないのだから。

「奏。自分の口で断りを入れなさい」
「断り……?」
「もうすぐ、シャイニング事務所とかいうふざけた事務所の所長さんが来る。
どうも貴女をアイドルとして引き取りたいそうよ」

あぁ、成る程。
自分達が断るのは角が立つからあたしが自ら「嫌だ」と言えばいい訳か。
祖母らしい考えだと思う。
そしてそれが一番懸命だとも……。

「分かりました。うまく断ればいいのですね」
「えぇ。くれぐれも音妓家の評判を落とす事のないように」
「はい」

シャイニング事務所、ね……。
どうせあたしはこの家から逃げられない。



あたしは生きた人形。ただそれだけ――。
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