第2章 本章~決意~
不意に口を挟んだその人は冷静に淡々と告げる。
「要は君がやりたいかやりたくないかを聞きたいだけ。家は関係なくね」
まっすぐ見つめるその目は全てを見透かしているような……。
目を逸らせない引力があるきがした。
その目にあたしは飲み込んだ言葉が甦った感覚に陥った。
「で?君はどうしたいの」
「あたしは……」
ほんの少し、たったこれだけの言葉を伝える事を許してほしいなんて思った。
そんなのが許されるわけがない事を口にする直前に思い出し、押し留めた。
「……アイドルになんて興味はありません」
「それが君の答え?」
「はい」
「なら、問題はないね」
『問題はない』?
一体どういうことだろうか?
今、あたしは確かに断ったはず……。
「藍ちゃん?今、奏ちゃんは――」
「『興味がない』って言ったでしょ?」
「え、えぇ」
「なりたくないわけでも毛嫌いしてるわけでもない。なら問題はないでしょ?」
さらりとなんてことない顔で言う彼は『当然だ』と言いたげだ。
普通に考えて通るわけのない理屈だけど、本当はちょっとだけ嬉しかった。
本当はあたしだって……
――この家を出たいのだから
「……家のほうはどう説得するつもりですか?」
「説得なんて必要ない。この話を君に断らせようとしたのは家なんでしょ?」
……本当に、この人は一体何なんだろう?
何でもお見通しみたいな事を言うなんて。