第9章 出逢い
幸村さんが部屋から出て行ってしまい静寂が訪れた。改めて辺りを見てみると布団に、押入れ、机まで置いてあって普通に生活が出来る部屋だ。こんな部屋をわざわざ与えてくれるなんて申し訳ない。
特に出来ることも無いし、早く傷を治したかったのでさっさと寝てしまおうと布団へ伏せたその時。細く襖が開いた。
「誰…?」
襖の奥に、人影もない。けれど勝手に開くなんて有り得ない。首を傾げてその開いた一点を見ていると、小さい真っ白な塊が布団目掛けて飛んでくる。
「イマリ!」
「さ〜ん!!探しましたよぉ!」
布団の端へ駆け寄り、私の傍でえんえんと泣くイマリ。私が急に豊臣領から居なくなって心配するのはこの子もそうだった。私はイマリの大きな瞳からぽろぽろ落ちる涙を指先で掬う。
「ごめんね…色々あって、真田軍にしばらくお世話になる事になったの。」
「そうだったんですね…。とにかく、無事でよかったです!何があったんですか?」
私はイマリに2日前に何があったのかを1つずつ話した。…そうだ、この子なら今豊臣軍がどうなっているのか知ってるかもしれない!
「ねぇ、イマリ。豊臣軍は今どうなってる?」
「さんとはぐれてしまったのを知って、騒然としてました…。今も必死に探してると思います。」
「そっか…。」
やっぱり、心配させちゃってるよね…。真田軍に居ることは言えずともせめて、生存してる事くらいは伝えられるといいんだけど。
「きっと、あの手この手を使って探し出すと思います。さんにすごく執着してるように見えたので…。」
「うーん…ねぇ、イマリ。貴方に私の伝言を頼んでいい?」
「えぇ!?ボクがあの吸血鬼達と話すんですか…?疑われたりしたらたぬき汁にされちゃうかも…!」
「…大丈夫、絶対信じてもらえる方法があるから!ちょっと待ってね。」