第9章 出逢い
「…ふふ、そうですね。」
なんだか、幸村さんと話していると元気を貰えるな。朝から暗い夢を見て気持ちまで暗くなっていたけれど、少しずつ和らいできた。
「…うん、やっぱり笑った顔の方が似合うね。」
「え?」
「ここに来てからずっと、寂しそうな顔をしていたから。」
「あ…豊臣軍の人達が心配で…。」
「…君も充分優しいよ。自分の信じている仲間だろ?きっと無事だ。脚、見せてもらってもいい?包帯変えよう。」
「ありがとうございます。」
私は怪我をした左足を幸村さんへ差し出した。切った場所は膝より少し高い位置だけれど、男の人に足に触られるってちょっと緊張する。
「痛いかもしれないけれど…出来るだけ優しくするから。我慢出来る?」
「はい!」
「うん、いい返事。」
ほんの少しだけ血の滲んだ包帯がするすると解かれて行く。露出した傷口をちらりと見てみれば結構深く切れている。けれど、化膿はしていないみたい。
傷口を見た瞬間、幸村さんの動きがピタリと止まった。…もしかして、血の匂いが気になる、とか。
「幸村さん?」
「…あっ、ご…ごめん!ちょっと待って。」
ごく、と生唾を飲み下す音がした。そんなに気になるのかな。私を助けてくれたし幸村さんになら血を飲まれても、いいんだけれど…。太股を舐められるのは流石に恥ずかしい。それと単純にこんな傷舐められたら痛そう。
結局、掛ける言葉がまとまらないまま幸村さんは真剣な顔付きで、手際良く包帯を巻き直してくれた。
「はい、終わり!兄ちゃんも言ってたけど、無茶して歩こうとしたりしないこと。何かあったら俺や佐助たちを呼んで。」
「分かりました。…それと、あの…。」
「ん?どうしたの?」
「困った時は、私の血を頼って下さい。幸村さんは命を救ってくれた恩人です。貴方になら血を吸われるのも怖くないから。」
「っ……!うん、本当に…本当に困った時は、頼らせてもらうかもしれない。けど…俺、女の子を噛んだ事は無いから少し緊張するというか…な、なんでもない!」
顔を真っ赤に染めた幸村さんは大きく首を横に振った。照れている…のかな?
「そろそろ俺も仕事に戻るよ。また時間が出来たら顔出すけれど、身体が怠かったらゆっくり眠って。」
「はい。お粥、ありがとうございました。幸村さんもお仕事頑張って下さい。」
「ありがとう!」