第13章 自覚
「ありがとう、助かるよ!」
「いえいえ、お役に立てたのであれば何より。向かうのであれば、道中どうかお気をつけて。」
本屋の店主は頭を下げて行ってしまった。やっと手掛りを得ることが出来た喜びからか、彼女は嬉しそうに笑う。
「これで姫神子探しに1歩近付きそうだね!」
「そうだな、1度城に戻って兄ちゃんにも報告しよう!」
俺たちは町から踵を返して城へと戻る。…姫神子様が見つかったら、彼女は本当に元の世界へ帰ってしまうのだろうか。そう思うと急に寂しさが込み上げてくる。帰らないで欲しい…そう言ったら君はどんな顔をするんだろう。
そんな考えが顔に出しまっていたのか、は不思議そうな顔で覗き込んで来る。
「…幸村くん?どうかした?……あっ、もしかして逢引とか言ったのにそれらしい事全然出来てないから、怒ってる!?」
「え!?いやいや、そんな事ないよ!と城下町を一緒に歩けて嬉しかったし、楽しいしさ!」
そういえば、そんな話もしていたな。忘れていた訳では無いけれど、思い出すとなんだか落ち着かなくて意識しないようにしていた。だって、俺は女の子と逢引なんてしたことがないし、どこへ行って何をすればいいかなんて、想像も出来なかったから。彼女は顎に手をあて少し視線を彷徨わせるとおずおずと片手を差し出して来た。
「…?」
「…せめて帰り道だけでも手、繋がない?」
「そんな無理しなくても…」
「無理してないよ、ほら、早く!お城着いちゃうよ?」
「ッ〜……わかった!」
急かされるがまま、差し出された手を取った。さっきも触れたけれど、の手は細くて柔らかくて、少し力を込めたら簡単に壊れてしまいそうだ。それが凄く…愛おしくて、彼女を守りたいって思ってしまう。
「幸村くんの手、意外と男の子らしいんだね。細いのにゴツゴツしてる。」
「それは褒めてるのかな?」
「褒めてるよ!この手で色んなものを守ってきたんだなぁって思って。」
「そうだね、真田領はもちろん…君の事もこの手で守りたい。」
「…ありがとう。」
少し寂しげに笑う彼女の真意は分からない。それでも、俺はこれからもを守りたいんだ。
だって俺は、君が好きだから。
そんな想いを胸に秘め、ゆっくりとした足取りで城へと戻るのだった。