第9章 出逢い
けど、人狼にとって尻尾はそう簡単に触らせていいものではないかもしれないし…。もどかしい。好奇心が止まない。
「…そんなに気になる?尻尾。」
「へっ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。無意識の内に、ずっと目で追ってしまっていたみたい。
「人狼見るのは初めて?」
「いえ、以前に……垂れ耳の人狼に遭遇した事はあるんですけど…。」
「垂れ耳…?」
「その時、無理矢理噛まれて。次会った時は引張たこうと思ってます。」
「え……っあはは!君、思ったより気が強いんだね!面白いなぁ。」
「笑い事じゃないですよ!噛まれるのって、結構怖いんですから!」
「そうだよね…どの位吸われるかも分からないだろうし。」
「信頼してる人なら、任せられるんですけどね…。」
「それが多分当たり前なんだと思う。が遭遇したっていう人狼は、多分伊達政宗だ。」
「伊達政宗…。」
やっぱり。独眼の男なんてそう居ないもんね。あまりにもはっきりした特徴だったから、あの暗がりの中でもよく覚えている。
「伊達の領地はここからそう遠くない。警戒する様に兵達にも伝えておくよ。」
「すみません…。」
「あっ、謝らないで。君を守るのが嫌だとかそんなことは思っていないしこれも何かの縁だ。佐助も言ってただろ?もう仲間だって。俺もそう思ってるからさ!も同じように思ってくれると嬉しいよ。」
「幸村さんって人が良すぎるってよく言われませんか?」
「え、どうだろうな…。それより、君は豊臣軍に居た時どんな生活をしていたんだ?織田軍との戦の時にも居た、って話も聞いたんだけど…。」
「あ、はい。良く秀吉さんに連れ回されてて。他の人たちの手伝いをさせて貰ったり、城下町へ行ったり…後は鍛錬して貰ってました。」
「鍛錬?」
「…武将の皆さんと比べたらまだまだなんですけど、刀をある程度扱えるんです。人を斬るのは怖いので、本物の刀を使う時は峰しか使わないんですけどね。」
「女の子なのに、刀を扱えるなんて珍しいな。だから君は刀を持っていたのか…。」
「はい。あ…もしも不都合があったら幸村さんが預かってくれても構いません!」
「いや、大丈夫だよ。自分を守る力を持ち合わせているのならむしろ持ってる方が何があった時に安全だ。まぁ、何も起こらない方がいいんだけどさ!」