第9章 出逢い
「足の怪我はかなり酷いものらしいな。困ったことがあればいつでもこの俺を頼るといい。」
「抜け駆けすんなよ才蔵!、オレも頼っていいんだからな!」
「あ、ありがとう…。」
2人はどうやら喧嘩するほど、といった関係らしい。話も終えた所で、私は幸村さんが持ってきてくれたお粥を口に運んだ。程よく塩の効いたお米に混ぜられた大根がいいアクセントになっていて、とてもおいしい。
「このお粥、おいしいです。大根が甘くって。」
「本当?嬉しいな!俺の畑で取れたやつなんだ!」
「幸村さん、畑作ってるんですか?」
「あぁ、傷が治ったら一緒においでよ。」
「はい、是非!」
…真田軍の人たちには申し訳ないけれど、傷が治るまで少なからずお世話になろう。治ったらしっかり御礼をして、豊臣領に帰る。それまでに手紙のひとつ、送れればいいけれど…それは難しいかな。また後で考えよう。
「それじゃあ俺は仕事に戻る。幸村、彼女を頼むよ。」
「わかった。」
「あっ…信之さん!まだ私歩けないですけど…書類の整理とか、手伝える事があったら何でも言ってください!」
「ありがとう、気持ちは受け取っておこう。けれど余り無茶はしないように。佐助、鎌ノ助、才蔵。お前達も自分の仕事に戻れ。」
…最近私が豊臣領の皆に思っていた事を他の人に言われることになるとは思わなかったな。そんな思いで苦笑いを零し出ていった4人を見送る。残ったのは幸村さんだけになった。食べ終わらないから、出られないんだよね…早く食べてしまおう。
「そんなに焦らなくていいよ。2日も絶食状態だったし、胃に負担が掛かってしまうかもしれない。食べ終わったら包帯を変えようか。」
「うん…何から何までありがとうございます。幸村さんって優しいですね。」
「えっ?はは、そんな事無いよ。」
それから幸村さんは真田領の事を色々と教えてくれた。民の事も、お兄さんの事も。特にお兄さんの事を話している時の幸村さんはとても楽しそうで私までどこか嬉しくなった気がした。
「私も、兄が居るんです。一緒ですね。」
「そうなんだ!俺たち似てるところとかあるかもしれないな。」
「そうですね!」
話している間、どうしても幸村さんの尻尾が気になった。左右にゆらゆら揺れるそれはすっごいもふもふしていそうで。柔らかそうで。狼、というより犬にしか見えない