第9章 出逢い
何となく嫌な予感がして、眉間にシワが寄った。恐る恐る幸村さんへ視線を向ければ真剣な眼差しと視軸が絡む。
「俺と佐助は、君の事を知っているんだ。」
「えっ!?」
「あ、いやっ…顔を知っていた、とかではなくて!…君の血が持つ力の話や、豊臣秀吉が君を籠絡しようとしてるっていうのは、もうこの神牙で知らない武将は多分、居ないんだよ。」
だから、織田軍も私を狙って来たんだ。この血を求めて…?
「姫神子の居なくなった今、君の血を求める者は多い。幸村と佐助は、君の存在を確認すべく豊臣領へ出向いていた途中だったんだ。」
「そう、だったんですね…。」
信之さんの言葉に、不安が募った。私が居るから、幸村さんたちは豊臣領へ来た。それなら他の軍の人達が同じように来る可能性も有るし、何なら奇襲だって有り得るだろう。私があの場所に居る限り、みんなを危険な目に合わせてしまうの…?
「………震えてるよ。」
「あ…ありがとう。」
急にこの世界が、とても怖いもののように思えてしまい手が震えてしまったらしい。それを収めるように、鎌ノ助さんが緩く手を握ってくれた。
「そんな、大変な事になってるなんて私知らなくて…ここに居たら皆さんにも御迷惑をお掛けしてしまうかもしれません。直ぐに出て行きます。」
「待った待った!君がこの真田領に居ることはおそらく今はまだどこの軍にも知られていない。それに、怪我してるんだから無理しちゃ駄目だよ。」
「でも…!助けてくれた人達を危険な目に合わせるのは嫌なんです…。」
「……何を心配する事がある?真田領にはこの天才的な忍、霧隠才蔵が居るのだぞ?危険な目に合うことなんてあるはずが無い。」
「…はい?」
「才蔵の言う通りだ、俺たちはそう簡単にやられたりはしない。必ず君を守るから、この城でゆっくり身体を休めるといい。」
「困ってる人を放ってはおけないしな!」
にっこりと笑った幸村さんにズキズキと痛む胸が少しだけ柔んだ気がした。なんだこの人達…良い人過ぎて変なツボとか買わされないか心配になる。
「ほら、お粥冷めちまうだろ?早く食って、元気になったらオレが真田領を案内してやるよ!」
「待て、お前が連れて行くところなどどうせ山か森だろう。俺の方が彼女を楽しませる場所へ連れていける。」
「なんだと!?」