第9章 出逢い
「オレは!オレも幸村と戦ったんだぜ!?あっ、オレ猿飛佐助、よろしくな!」
「ふふ、佐助さんもありがとう。よろしくお願いします。」
必死に主張してくる姿が可愛らしくつい笑ってしまうと、お礼を言われたのが嬉しかったのか彼の尻尾が上機嫌にゆらゆら揺れた。
その様子がまた犬のようで可愛くて、じっと見ていれば突然誰かに片手を取られる。手の先へと視線を移すと青い髪の男がわかり易くキメ顔で顔を寄せて来た。
「俺は霧隠才蔵だ。…おや、どうしたのかな、お嬢さん。そんなに俺をじっと見ているということは……。いやはや、すまぬ。俺の美しさは本当に罪だな。一瞬で君を魅了してしまうとは。」
「いや…勘違いだろ。お前が急に手を取るからびっくりしただけだっつーの。」
うっとりとしたら顔を浮かべる彼。魅了されたというより急に手を取られてびっくりしただけというか。まさに佐助さんの言う通りだ。
「ふぁ〜……由利鎌ノ助。よろしく。」
「才蔵さんも、鎌ノ助さんも、よろしくお願いします。」
「おいおい、オレたちもう仲間だろ?硬っ苦しい敬語とか良いって!」
「えぇ、まだ出会って五分も経ってないですよ!?」
「細かい事は気にすんなよ、な!」
「うーん、じゃあ…慣れたら…。」
「おう!」
そう言って歯を見せて笑う佐助さんはどこか利家を連想させて胸がぎゅっと痛くなった。一刻も早く、豊臣領へ帰らないと。
着物の裾を握り締め俯けば幸村さんが歩み寄り、お粥を置いてくれた。
「…食べながらで良いから、教えてくれる?君の事。俺たちと出会う前に何があったのか。」
「……はい。」
私は幸村さん達に元々は豊臣領でお世話になっていた事、神社に向かう途中織田軍に襲われ川に落ちてしまったことだけを伝えた。勿論、異世界から来たことは言えるわけが無い。元々この人達にとっては信憑性の薄いものだから、言う必要も無いだろう。そう思って。
「なるほど、織田軍に…それは大変だったな。」
「なぁ、神社って、何か御参りでもするつもりだったのか?」
「え、あ…はい。そんな所ですかね。」
曖昧に笑うと、奇妙な沈黙が流れた。流石にちょっと、怪し過ぎた…?そんな事を考えていると、信之さんが肩を竦める。
「幸村、話してもいいんじゃないか?」
「兄ちゃん…そうだね。」
「話すって、何をですか…?」