第9章 出逢い
「怪我をしている女の子を放っておける男なんて居ないよ。立てそう?」
「怪我…?あ…。」
本当だ。立ち上がろうと足に力を込めれば突き刺すような痛みが襲う。視線を落とすと太腿に包帯が綺麗に巻かれていた。そうか、怪我までしてしまったんだった。無理言って着いて行ったのにこんな様なんて、情けない…。
自分の不甲斐なさにがっくりと肩を落とすと幸村さんは戸惑がちに声を掛けてくる。
「やっぱり痛む?その…おぶろうか?」
「い、いえっ!大丈夫です、立てます!」
反対側の足に体重を掛けて無理矢理立ち上がる。歩こうと怪我した足を前に出し、少しだけ体重を掛けると恐ろしく激痛が走った。どんだけぱっくり切ったの、私は…!見るのも恐ろしい。
「かなり深く切ってたみたいだからね。そうだ、ここにご飯を運ぼうか!仲間も連れてくるから、休んでて?」
「うう…すみません…。」
なんて優しい人なんだろう。ここは無理せずにお言葉に甘えさせて貰う事にして布団へ腰を降ろす。あれから半兵衛くんはどうなったんだろう。無事城に帰れたかな…。官兵衛さんも、無事だといいんだけれど…。
嫌な想像が頭を巡る。秀吉さんも心配しているかもしれない。
「入るよ?」
「はい、どうぞ!」
襖を開くとそこに立っていたのは幸村さんに良く似た男の人と猫耳…犬耳?みたいなパーカーを被った男の子、青い髪をした顔立ちの整った男と見るからにやんちゃそうな男の子が立っていた。ひとつの大きな共通点としては、皆犬耳が生えている事。幸村さんは美味しそうなお粥を持ってきてくれている。凄いお腹すいてきた。
「元気になったのか?良かったなー!厄魔に襲われそうになってて大変だったんだぜ。」
「えっ!?私が気絶してる間にですか?」
「そうそう、オレと幸村が来なかったらやばかったなー。無事で何よりだ。」
意識を失っている間にそんな事になっていたなんて考えもしなかった。やんちゃそうな子と幸村さんには感謝しか無い。
「こら、佐助。まずは自己紹介が先だろ?…ごめんね、。まずこっちが…」
「真田信之だ。幸村の兄で副将を務めている。よろしく。」
「わぁ、通りで…。優しそうな雰囲気とか、そっくりだなって思ったんです。私はと申します。幸村さんには命を救われたみたいで…本当にありがとうございます。」