第7章 突撃
どうして、こんな時でも私を守ろうとするんだ。自分を大切にして、って言ったのに!自分が無力だから、こんなことになってしまったのはよく分かってる。けど…!
そう怒鳴りたくなる気持ちを今はぐっと堪えて私は全力で走った。
再び広い森の中へ逃げ込む。暫く走った所で私たちは身を隠せそうな大木の根元に座り込む。
「はぁ……はぁ…だいぶ引き離したな。」
「利家、直ぐに止血しないと…!」
「心配すんなって、こんくらいどうってことねぇよ。」
「そんな分けないでしょ!矢刺さってるんだよ…!?」
「たったの3本じゃねぇか。…けどまぁ、刺さったまんまってのも気持ちわりぃし何とかすっか。」
「え、ちょ…ちょっと待って、何を…。」
そう言って利家は腕に刺さった矢を掴み、大きく息を吸い込んだ。ま、まさか。
「よし、いくぞ……いち、にの…」
「待っ……!!」
「さん!っ、ぐ!!」
掛け声と共に、思いっきり矢を引き抜く利家。腕には深々と穴が開き、当然赤黒い血液が腕を染める。見たことの無いくらい、痛々しい光景だった。
「なんで引き抜くの!?バカ!」
「けど、抜かなきゃ止血も何もねぇだろ。」
利家はそう言って、残りの2本の矢も強引に抜き取ってしまう。
「っ…あぐ!!」
「もう…っ!」
私は刀を抜き自分の着物の袖を引き裂いた。それで止血しようと傷口に宛てがうも留まることなく溢れてくる血は利家の服を真っ赤に染め上げていく。
「……はっ、流石にこれはきついな…。」
「無茶するな、って言ったのに…!」
「ははっ…そういや、そうだったな。わりぃ、次は気を付けるわ。約束する。」
「利家、直ぐに私の血を飲んで。そうすれば傷も治るでしょ?」
「あー……。気持ちはありがてえけど、それは、やめとく。」
「なんで…?」
「血が足りねえせいか、今はただでさえ理性の箍が外れそうなんだよ。お前の血なんか飲んだら、歯止めが効かなくなってメチャクチャにしちまうかもしれねえ。」
だから、なんでこんな時まで私を心配してるんだ。今、死にそうなのは自分なのに。
「良いよ、メチャクチャにしても。私のせいで、利家に怪我させてしまったんだから。」
「は!?おまっ……今そういう事言うなって!」
「だって利家に死んで欲しくない!」
「オレは大丈夫だって!今は豊臣領まで逃げる事を考えようぜ。」