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夢現【戦刻ナイトブラッド】

第7章 突撃


「みんなの為に私の血が使えるのなら光栄だよ。そもそも血を使って貰うために居るんだしね。」

「まぁ気持ちだけ貰っとく。けど、嫌ならちゃんと言えよ?」

「ありがとう。そろそろ寝ようか。灯り消すよ。」

「あぁ、悪いな。」

蝋燭に灯っていた明かりを消す。布団は1組しか無かった為、気恥ずかしくは有るが同じ布団に入り互いに背を向けた。これはこれで、むしろ緊張する気がする…。早く寝てしまおうとギュッと目を閉じたところ、隣から優しく声が掛けられた。

「…なぁ、。大変か?」

「え…?」

「秀吉から聞いたんだよ。お前が帰りたがってるって。」

「それは、まぁ…。」

「…ふーん。お前は、オレたちとこのまま一緒に暮らすのは嫌なのか?」

「嫌ってわけじゃないよ。皆と過ごすのはとても楽しい。知らないものが沢山あって、毎日凄く新鮮で。」

「なら…。」

「けど、私にも家族が居る。このまま行方不明って事になってたら心配しているだろうし、きっと悲しむ。」

身体を反転させ、利家の身体と向かい合う。背中しか見えない為、その表情を見る事は出来なかったが声は少しだけ、寂しそうだった。私は片腕を利家の腹へ回し身を寄せた。伝わる体温が心地好く、今お互い生きている事が良くわかる。夢じゃないことが、ハッキリと自覚できる。

「…ちょっとだけ、考えた事は有るよ。もしもお母さんたちがこのまま私がいた事を忘れてしまったなら、何も心配すること無くこの世界に残れるのに、って。忘れられてしまうのは悲しいけれど、皆のこともどんどん大切になっていくからこのままだと離れ難くなってしまいそう。どちらを大切にするべきか、分からなくなっちゃう。」

「…オレは正直、お前にはこの世界に残ってて欲しい。軍に活気が出たしと居るのはオレも…楽しいからよ。」

「ふふ、ありがとう。私も利家と話したり出掛けたりするの、すっごく楽しいよ!元気になれるし。」

「一緒だな!」

「同じだね。」

そう言って笑い合う。とても敵軍から逃走中とは思えない和やかな雰囲気の中、急に空気がピリついた。外から感じる殺気。鎧が擦れる僅かな金属音と足音。…これは多分、盗賊じゃない。私は利家と目を合わせ、小さく頷いた。

「直ぐにここから出るぞ。んで、一気に豊臣領まで走る。」

「分かった。」
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