第6章 逢引
「の世界にも団子、ってあったの?」
「うん、みたらし団子、よもぎ入りのお団子、餡子が乗せられたやつ、色々あったよ。それと、洋菓子っていうものも有るの。」
「洋菓子?」
「そう!小麦を使ったものが殆どなんだけど、すっごく美味しいよ。」
「興味あるなー。神牙にあるもので作れそう?」
「どうだろ…見てみないと分からないなぁ。でも前に約束したし、頑張ってみるね。」
話したことちゃんと覚えててくれたらしい。すっかり忘れ去られてると思ってたけど。それからほど無くして運ばれてきた団子を食べながら会話を続ける。の世界は神牙より随分発達しているみたいで、発見も多く聞いてて純粋に面白い。
「俺も1度でいいからあんたのいた世界に行ってみたいな。」
「え?きっと秀吉さんは退屈しちゃうよ。」
「平和な世界でと静かに暮らすのも俺にとっては幸せだよ。民も、神牙みたいに戦に怯えることも無いんでしょ?」
「それは…そうだね。けど何で当然のように私が秀吉さんと暮らす事になってるの?」
「この世界だろうがあんたの世界だろうが、俺がをお嫁さんにしたいのは変わらないからね!」
「…ぶれないなぁ。」
は表情を隠すようにお茶を啜った。血とは無関係に好きだよ、って意味なんだけど…伝わらないか。うーん、戦で策を練るより、彼女に想いを伝える方がずっと難しい気がする。
団子を食べ終え、勘定を済ませてから町へ出る。再び手を繋ぎながらゆっくりと歩いた。
「……あっ。」
「どうしたの?」
「小物屋、見てもいい?私の世界にはこういうの、少なかったから珍しくて。」
「勿論!」
に手を引かれて小物屋に入る。色とりどりの櫛や簪が並んでいて、彼女は夢中でそれを眺めていた。は少し男らしいというか、強気なところが目立つけれどやっぱり女の子らしい所もあるみたいだ。子供みたいに目をキラキラさせて。そこがまた、可愛いんだよなぁ。彼女は自分の魅力について、疎すぎる。
「見て、秀吉さん!この簪の細工、繊細で凄く綺麗。」
「そうだねぇ、気に入ったのがあるなら買ってあげるよ?」
「え、いいです。そんなつもりで言ったんじゃないから…!」