第6章 逢引
「一目惚れは嘘じゃない。茂みに隠れてる時、目…合ったでしょ?」
「!!あの時にもう気付いてたんだね…。」
「まぁね!伊達に戦ばかりして無いよ。随分可愛いらしい女の子が隠れてるなーって思ったんだ。」
「……可愛いなんて生まれてこの方言われた事無いんだよね…。」
「そうなの?俺から見ればあんたは凄く可愛いと思うけど。直ぐに照れて俯く所とか。」
図星だったのか、は顔を上げると少しだけ頬を赤く染め睨んで来る。全然怖くないんだけどね。
「は?今の俺はどう見える?」
「秀吉さんは…意地が悪い時もあれば気を使って優しくしてくれる時もあって…掴み所が無い人、かな。」
「へぇ、掴み所が無いって言われたのは初めてだな。例えばどんな所?」
「秀吉さんは私を甘やかしてくれるけど…本気で好きで嫁にとろうと思ってないでしょ?」
「…どうしてそう思うの?」
「直感かな。秀吉さんってすごい野心家だよね。虎視眈々と天下統一を目指してる。でも織田信長の力は圧倒的過ぎて、簡単には及ばない。切り札として私を取っておけば、万一の時役に立つかもしれない。いざと言う時に抵抗されるのは面倒だし、今のうちに籠絡してしまえば…とか。」
「成程、悪くない考えだね。」
自分の血の力を漸く理解して来たみたいだ。その上でここまで思考を巡らせているのは素直に感心する。…けど、俺って普段そんなに野心をもってるようにみられるのか?それとも、彼女の世界の俺もそうだった?
「血は確かに、何にも変え難い位に美味しいけどそれを差し引いてもの事を気に入っているのは本当だよ。」
「…ありがとう。」
そう言って曖昧に笑った。…本気なんだけど、ちゃんと本人に伝わるにはまだまだ掛かりそうだなー。
そんな話をしていると、の言っていた茶屋へ着いた。店主と顔見知りになっていたみたいで、気軽に話をしている。
「また足を運んで下さったんですね!今日は秀吉様とおいでですか。」
「はい!この前頂いたお団子がとっても美味しかったので秀吉さんにも食べてもらいたくて。」
「ありがとうございます!直ぐにお持ちしますのでゆっくりお寛ぎ下さい。」
店内の椅子に座り、と向き合う。店の中は甘い匂いと茶の香りで充満していた。