第5章 計画
静かに笑った三成さんはそのままたった1人で盗賊の隠れ家へと斬り込んでいく。めっちゃ足速い…!気を抜いたら見失いそう。
盗賊達が反撃する暇もなく、三成さんは言葉通り目にも止まらぬ刀さばきで、あっという間に全員を斬り伏せてしまった。あれが、私の血に宿る力…。そう考えると少しだけ怖い気もする。
それから討伐を終え、元の姿に戻った三成さんと妹さんを送り届け、預けていた本を受け取り城に戻った。既に夜も更けていた事もあり皆はとっくに夕餉も済ませていたようで、三成さんと2人部屋で食べつつ計画書を作成する為に事を急ぐ。
「この本を書庫へ片付けてきて下さい。左奥の棚の1番上です。」
「はい!」
文字が読めない分、手伝える事も少なかったけれど、ほんの僅かでも手助けになれていたらいいな…。
時間は刻一刻と過ぎていった。時計が無いから正確な時間までは分からなかったけど。空から差し込む月の光が、机に向かう三成さんを優しく照らす。そんな後ろ姿を見ながら、私はいつの間にか眠りについていた。
目を覚ますと、眠った時と変わらない三成さんの背中があった。まさか、寝てないの?直ぐに三成さんに歩み寄ろうと思い立ち上がろうとするが、体に何か掛けてある。…三成さんの着物?
「やっと起きましたか。」
「すみません、いつの間にか寝ちゃって…!着物、ありがとうございます。」
「…風邪を引かれては困るので掛けただけです。お礼なんて必要ありません。」
「それでも気遣って頂いたのは嬉しかったの。」
ささっと借りていた着物をたたみ三成さんに返す。そのついでに顔を覗いてみれば、ちょっとだけ目にクマが出来ていた。
「なんですか、そんなに見て。私の顔になにか付いていますか?」
「いえ、クマが出来てるなと思って。長時間お疲れ様でした。計画書は…?」
「ちょうど今、完成したところです。」
「凄い!…のに、結局ろくに手伝いも出来ず寝ちゃってすみません…。」
「別に構いませんよ。あなたが起きていたところで、役に立ったとは思えませんし…。それに、昨日は私に血を吸われていますから。身体が休息を欲していたのでしょう。」
「そうですけど…。疲れてるのは三成さんも同じだった筈なので。本当に私の手助けなんて必要無かったのは寂しいですけれど、1人で計画書を完成させてしまうなんて三成さんは凄い人なんですね。」