第5章 計画
「あれが盗賊ですか…。」
「見える限りでは3人。あれは見張りですね。となるとあの木の影に隠れ家があるはずです。」
「この情報量でそこまで分かるんですか?凄いですね…!」
「べ、別にこの程度…!戦に携わる者なら分かって当然です。」
照れるくらいなら素直に喜べば良いのに。可愛い人だなぁ。そう思いはするものの、顔に出したら何か言われそうだったので何事も無かったかのように盗賊達へ視線を向ける。
「あのお兄さんの妹さんも、あそこにいるんですかね。」
「おそらく。…それにしても規律のある動きに統一された鎧や武器。やはりあの盗賊、私の思っていた通りですね。」
「どういう事ですか?」
「あれは、南部で略奪行為を行っていた落ち武者崩れの盗賊です。」
「!それって、今三成さんが計画書を作ってる…!」
「その一味と考えていいでしょう。この辺りでは盗賊の目撃報告が無かったので、農民の話を聞いて、おかしいと思ったんです。おそらく、豊臣軍の動きや実情を偵察する為に南部から遠征して来たのでしょう。」
わざわざ偵察までするなんて。そもそも目的ってなんだろう。……考えても私には分かりそうに無いな。
「どうするんですか?」
「……こんな作戦は、利家のようで使いたくはないのですが…一気に攻めます。」
…えっ、それって作戦って言わないよね?殴り込みに行くだけって話し、だよね?
「ほ、本当にそれで行くんですか?」
「もう日も暮れていてしまいましたし、悠長に策を練っている時間はありません。秀吉様に提出する計画書を作成できなくなっては、それこそ本末転倒ですからね。」
こんな時まで自分の仕事の心配迄する余裕があるのか…。確かに重要な仕事なのは分かるけど事情が事情な訳だし秀吉さんも許してくれるんじゃ…?
「……では、宜しいですか?」
「はい?」
三成さんの手が両肩へ乗せられる。眼鏡越しに絡む視線は真剣そのものだ。けど、よろしいって何が?何の話?
意味が分からず首を傾げると徐にそのまま身体を引かれ、抱き締められた。トクトクと規則的に響く心音。顔を上げれば三成さんと鼻先が触れそうな程までに、近い。
「そういう訳ですから、あなたの血を飲ませていただきますよ。」
「うっ…やっぱりそうなるんですね…!」
「緊急事態なんです。仕方ないでしょう?」