第5章 計画
「…一体何事ですか?まずは、詳しく状況を説明して下さい。」
「はい…実は私はこの町とは少し離れたところに妹と共に暮らしていたのですが…妹が、盗賊に攫われてしまったんです!助けようにも、私には到底…!」
男は悔しそうに唇を噛み締め俯く。その姿に酷く胸が傷んだ。感情移入したというのもあるけれど、今私の兄もこの人と同じように不安に思っているのかもしれない。瞬時にそう思ってしまった。
「なるほど…。あなたは、その盗賊の姿を見ているのですね?」
「は、はい。」
「では、いくつか質問させて頂きます。まずは敵の数と、持っていた武器。それに服装と背格好、だいたいの年齢も。」
私にはこの質問にどんな意図があるのかイマイチ分からなかったが、三成さんはどんどん質問を繰り返していく。それから細かな情報まで引き出した三成さんは1度ゆっくりと頷いた。
「…なるほど。詳しい情報をありがとうございます。おかげで、適切な討伐作戦が立てられました。」
「今の質問でそこまで!?」
「当然でしょう。無駄な質問をしている時間があるとでも思っていたんですか?」
些かバカにするような表情をされたのが若干イラッときたけれど提示された情報だけで瞬時に作戦まで立てられるのは素直にすごいと思った。やっぱり頭良いんだな。秀吉さんが信頼している理由が良くわかる気がする。
「では、すぐにあなたの妹を取り戻しに行きましょう。」
「…!本当ですか!ありがとうございます…!」
「という事で、申し訳ないですが一旦ここに本を預けてもいいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。どうかお気を付けて。ご武運をお祈りしております。」
「さぁ、行きますよ。」
「えっ、私も行っていいんですか?」
「えぇ。あなたが居ないと話になりません。」
…もしかして、血のことを言っているのだろうか。若干不穏な空気を感じ取ったがこの領民の為なら致し方無い。大人しく本を置き男の人の案内で敵の居る場所へと向かった。
盗賊が居るという森の中までは農民を連れて行く事は出来ず、私と三成さんの2人で暗くなった森の中を歩く。足元は悪いし、何か獣でも出そうな雰囲気だ…。私も常日頃刀を持ち歩くべきかな。
「……ん?あれは…。」
ふと三成さんが立ち止まり、私の手を引いて手頃な茂みの中へと身を隠す。そろりと後から顔を出してみれば…蠢く影が。